国家公務員→ペンタゴン→起業を経てメンターに。平和への道を志した女性のオンリーワンな人生 (中野敬子さん・前編)

現在はウィメンズキャリア メンター、そしてエグゼクティブコーチとして活躍する中野敬子さん。知性あふれる優しい笑顔の持ち主は、かつて圧倒的な男性社会において日本人唯一のポジションを築いた女性。そんな中野さんが“他の人の成功を後押しする”仕事を選ぶまでの経緯に迫ります。

 

 

 ー 中野さんのキャリアの出発点は“防衛庁”(現防衛省)。なぜこの道を歩まれたのですか?

 

それは私が中学生の頃までさかのぼります。当時フィリピンで起きた政変をニュースで見た私は、“ピープル・パワー”と呼ばれた民衆の力の凄さを感じました。でも一方で、戦争を始めるのも人間です。良い方向にも悪い方向にも動く人間の本質と、戦争を防ぐための処方箋を知りたいという思いから国際政治に関心を持ち、やがて安全保障に興味を持つようになりました。日本の大学で国際政治、その後進んだロンドン大学大学院では安全保障を専攻。それらを通じて得た知見を活かし国に貢献したいと思い、私は防衛庁を目指しました。

 

ー 防衛庁は“保守的で男性中心の組織”というイメージですが、実際はいかがでしたか?

 

そうですね。男社会であることは間違いないですね(笑)。ただ、若い時から大きな仕事を任せてくれるユニークな組織でもあります。危機管理官庁ゆえに常に即断即決が求められるため、意思決定のスピードが速いスタッフ制を採っているからでしょうか。私自身も入庁2年目で、防衛大臣通訳に抜擢されたくらいですから。

 

通訳の職務は広範囲にわたり、要人が来日する際の大使館との調整、会議の準備、スピーチ案のライティング、最後に通訳業務が加わる感じです。日中の業務が終わった後、深夜まで日々の振り返りと通訳の準備でした。

 

男性中心の組織の中で成果を出すためには、性別にとらわれず”自分らしくあり続けること”が大切だと思います。男性のように働こうとしても、どうしても体力面ではかなわない。男同士の付き合いにもフルでは参加できません。だからといって、女性であることをアピールしすぎては、男性・女性の両サイドから煙たがられる。沢山の失敗や試行錯誤を経て、どんな時も「性差を意識しすぎず、自然体で自分らしくいよう」、そう決めた日から、気持ちがラクになり、迷いなく仕事に集中できるようになりました。

 

ー 要人との接点が多い業務だと思いますが、そのような方々と信頼関係を築く工夫としてどのようなことをしていたのですか?

 

通訳時代は、戦争体験のある党の長老から、石破茂さんのような当時の若手有力政治家まで、4年間で計6人の大臣の通訳を担当しました。大臣が代わるたびにゼロから信頼関係を構築する必要があります。特に他国の大臣とのミーティングは、国益をかけた真剣勝負の場ですので、話し手と通訳の信頼関係の構築は不可欠です。

 

私は、要人、キーパーソンとの信頼関係構築のために、顔合わせ前の事前準備を周囲の方に呆れられるほど徹底していました。

 

また、その過程で疑問に思ったことは、忖度せず、率直に質問することを心がけていました。特に準備段階では、通訳をさせていただく方が取り上げられた情報を、新聞・雑誌・テレビ番組・著書、ウェブなど手に入れられる限りを集め、読み込みます。そして、人物像から個々の発言の背景や意図まで、自分なりに理解を深めます。その上で、疑問に感じたことや、発言の真意など知りたいことは、率直に伺い、お答えいただいていました。どなたも、真剣な質問には必ず本音で答えてくださいます。短時間であっても密度の濃いコミュニケーションの機会をいただくことで、正確な通訳に近づけることができます。結果的に、通訳を介して、ご自身の真意がミーティング相手に正しく伝わったという印象を持ってもらう、その積み重ねの中で、信頼関係を築かせていただいたように思います。

 

仕事に取り組むにあたり、「悲観的に準備し、楽観的に対処せよ」という言葉を念頭に置いています。これは、入庁前に薫陶を受け、私のメンター的存在でもあった故・佐々淳行先生(初代内閣安全保障室長)の言葉です。今も変わらず大切にしてる私の仕事のモットーです。

 

通訳の任務を終えた後、3年間の国際情勢分析業務、4年間の国内・国際広報業務などを経て、邦人初の米国国防総省(通称ペンタゴン)派遣となりました。2010年のことです。

 

ー アメリカの国防総省勤務というチャンスを手に入れるために、どのような工夫をされたのですか?

 

派遣にあたり、防衛省の先輩方から強力なサポートを得ることができました。また、それまでの仕事を通じてアメリカの政府要人やペンタゴン関係者との知己を得ていたことも手伝って、現地ではスムーズに受け入れてもらうことができました。日米という国を超えた人と人のつながり、縁の不思議さ、善意の有難さを実感する経験でした。

 

多くの日米の関係者が積み上げてきた”信頼貯金”を使わせてもらっているような感覚というか・・・その”信頼”の輪の中に入れてもらえたことで、大きなチャンスをいただけたように思います。

 

ー アメリカからの帰国後、異動直後の妊娠。そこからどのようにキャリア観が変化しましたか?

 

帰国後、国際政策業務に異動。その頃に結婚し、その後すぐに妊娠しました。その事実を、異動先の上司に報告する時は、正直言って怖かった。というのも、その方は若手時代からいつも私に期待をかけてくれ、評価して下さった人だからです。

 

「ご迷惑をかけるのではないか」と申し訳なく感じ、私は思わず「すみません。異動してきたばかりなのに妊娠してしまいました」と上司に謝りました。

 

しかし「何で謝るの?とても素晴らしいことなのに。よかったね。おめでとう!」と真っ先に喜んでくれたのです。

 

その反応に「ああ、素直に喜んでいいんだ。」とホッとしたことを覚えています。また、上司はすぐに課のメンバーに協力を要請してくれ、多忙な部署にも関わらず、母体の健康第一と毎日定時で退省させてもらいました。

 

私自身も職場に迷惑をかけないよう、受け持ちのタスクやそれらに関する情報、進捗具合を全てオープンにし、急に休むことになっても仕事が回るよう工夫しました。私が抜けたらその分他のスタッフへの負担が増えてしまうにも関わらず、皆さんが進んで協力してくれることに感謝しつつ、臨月まで充実した仕事をさせていただきました。

 

育休から復職後、これまで経験したことのない業務の職場に配属。悩みつつも、育児と仕事の両立に奮闘していました。

 

一方で、子育て経験を通じて、新しい気持ちも芽生えてきました。

 

「これまで私は、自分の残りの人生、せいぜい今後50年間のことを“未来”だと考えていた。でもこれからは、娘や同世代の子供たちが生きていく今後100年間が、私の考えるべき未来になったんだ。じゃあ、私にしかできない使命って何だろう?」・・・娘が寝た後の暗く静かな寝室で考え続け、やがて「人材育成に貢献したい」という思いが募りはじめます。

 

ー 国家公務員を退職し、起業というキャリアチェンジを目指しますね。

 

仕事の経験を通じて“英語コミュニケーション教育”に取り組むことにしました。日本人は伝えるべきメッセージやアイデアを持っているし、あらゆる分野でリーダーシップを発揮できる能力も持っている。それにも関わらず、減点主義のトラウマから、英語コミュニケーションに対し苦手意識を強く抱いている人があまりにも多い – 私は「国際舞台で堂々と英語でコミュニケーションが取れる日本人を育成したい」という思いに駆られました。そして一念発起で防衛省を退職し、その半年後に英会話スクールを開業しました。

 

やがて徐々にではありますが、個人のみならず企業や大学からの仕事のオファーをいただくまでに成長しました。その後、2018年4月に事業譲渡をし、また一旦立ち止まり、新たな道を模索し始めます。

 

私は防衛省、ペンタゴン、その後の英会話スクール時代に至るまで、成功者と呼ばれる方々に数多く出会う機会に恵まれました。でも成功した人がいる一方で、成功できず悩んでいる人がいる。「その違いは何だろう?」と考えに考えを重ねるうちに、成功者の共通項が見えてきたのです。

 

ー 成功者の共通項を教えてください。

 

3つあります。第一は「ゴールのイメージを鮮明に持っていること」。その人たちには自分の在りたい姿、実現したいことがはっきりと見えています。

 

第二は「それに向けてやるべきことを日常生活レベルに落とし込み日々実践していること」。第三は「ゴール実現まで努力を持続させる情熱を燃やし続けること」。成功者と呼ばれる人たちは、これらを全て成し遂げています。

 

英会話スクール時代、私は教えるだけでなく、生徒さんやクライアントの目標達成に向けて伴走するコーチでもありました。そのため、私は本やセミナー、動画などを通じてコーチングを独学で学んでいました。

 

理論的にコーチングを学ぶためにスクールにも入ります。また、自分自身がコーチングを受けてみようとコーチを雇ってみました。今もメンターとしてお世話になっている方です。その方が「中野さんは絶対にエグゼクティブコーチに向いていると思うよ」とおっしゃってくださったのですが、その一言に勇気をもらい、学習と実践トレーニングを加速させていきました。

 

ちょうどそのタイミングで、私は育キャリに出会ったのです。

 

続きは後編

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